ナツメグのサクっと作曲 ”コツを探れ”

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「鷺巣詩郎 執筆録 其の1」を読んで、あらためて覚悟を問われた話

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 以前ブログで「ガチで音楽制作に役に立った8冊」の一つに入れさせていただいた本なのですが、とってもお気に入りなので今回改めて紹介します。
 
 エヴァンゲリオンシン・ゴジラのサントラで有名な鷺巣詩郎さんですが、歌ものポップスも非常多く手がけられています。その数多くの過去仕事の詳細な日記が月刊誌「bmr」のコラム「studio vibe」に綴られているのですが、この本はそれをまとめたものです。
 軽音楽部のめちゃくちゃデキる先輩が、後輩にノウハウやら経験を面白おかしく語るような内容でとっても親近感があり読みやすいです。
 
 
 数多くの海外レコーディングの現場の話が出てきますが、ミュージシャンやエンジニアのやりとりなどが特にリアルで、うまくいったこと、いかなかったこと、苦労したことが臨場感たっぷりに語られています。まるで自分も現場スタッフとして参加してたんじゃないかくらい(言い過ぎだけど・)な気持ちになれるからこの本は好きですね。
基本、十数年前の話なので、当時とのテクノロジーの違いが色濃く出ていてそこも面白い部分です。
 
 
サントラの話では
 音だけ聴くとリズムが悪いと感じるティンパニが、なぜか映像と合わせるとぴったりきて、逆にかっちり同じ音色で打ち込んだ音を絵と合わせると躍動感がなくてイマイチだった・・・という話はサントラの性質(映像との関係性)をわかりやすくあらわしてるなと思いました。
 
 
あと僕に刺さったのは
”アーティスト・プロダクションは「時流軸」。フィルムスコア・プロダクションは「地域軸」”という箇所。
 
 

「時流軸」 アーティスト・プロダクションは徹底的に流行を研究しなければならない。

 

「時流軸」に関して語られている箇所では次の言葉が刺さります。 
アーティスト・プロダクションの心構えとして書いてあった次の抜粋です。
 
”とくにソングライター、プロデューサー、エンジニアは、その時代における最新情報、つまり同業者による他作品を貪るように聴かなければならず、これを怠るや否や、ほどなくメインストリームからの退場を余儀なくされる。この非常な仕打ちは商業音楽の先進国ではごく当たり前の厳しさである。あとは二流、三流で生き延びていくか、キッパリ仕事をやめるしかない。”(「鷺巣詩郎 執筆録 其の1」から引用)
 
 
当たり前なのかもしれませんがこう書かれるとやっぱり覚悟を問われますね。
 
 

「地域軸」 フィルムスコア・プロダクションは流行は必要ないが、あやゆる地域・カテゴリーの音楽にアンテナを張らなければならない。

 つまりシーンに必要な音楽だったらクラシックでもロックでも民族音楽でもなんでも作れなければいけないということ。
 
また本のセリフを引用させていただく。
”一本の映画の中でもサントラはバロックもパンクもディキシーランドも現代音楽もスムース・ジャズもバレエもヒップポップもフラメンコも出てくるなんてそんなめずらしいケースじゃない。なにせ最大のエンタテインメントなのだから。映画音楽を書こうとする作曲家が、コレとアレは得意なんですが、ソレとドレは苦手分野なんです、なんていってたら即刻退場だ。”
 
 
 
 
 
どうですか? ちょっと読みたくなるでしょ? 其の2が早く出ないかなぁ。
 
音楽で食べていこうとしている方には、是非是非オススメなので読んでみてはいかがでしょうか?